祝賀の時が訪れた！大魔王ゾーマを討伐したのだ！闇の支配者として世界を恐怖に陥れたゾーマの力を、私は自らの剣と魔法、そして仲間たちの絆によって打ち破った。この偉業は、ドラゴンクエストの歴史に新たな一ページを刻む瞬間だった。勝利の余韻に浸りながら、私は胸を高鳴らせ、アリアハンの故郷へと凱旋する準備を整えた。だが、この歓喜の瞬間は、予期せぬ混乱の前触れに過ぎなかった。この世界は、私の知るドラゴンクエストとはどこか異なり、まるでゲームのプログラムが意図しない方向に暴走しているかのようだった。
何ということだ！アリアハンが、存在しない！？勇者ロトの故郷として知られ、かつては活気あふれる城下町として私の心の拠り所だったアリアハンが、忽然と姿を消していたのだ。私は目を疑った。地平線の彼方に広がるべき城壁も、市場のにぎわいも、子供たちの笑い声も、すべてが跡形もなく消え去っていた。私は偉大なる大魔王ゾーマを倒し、勝利の栄光を手に入れたはずだった。なのに、なぜ故郷が消滅しているのか？この異常事態は、私の心に暗い影を落とした。ゾーマを倒したことで、世界の均衡が崩れたのだろうか。それとも、この世界そのものが、私の知らぬ間に書き換えられたのだろうか。
当面の間、私はレーベの村に立ち寄ることにした。レーベの村は、アリアハンにほど近い小さな集落で、素朴な住民たちが穏やかに暮らす場所だ。村の入り口に立つと、懐かしい風の匂いが鼻をくすぐり、かつての冒険の日々が脳裏に蘇った。しかし、村から一歩外に出た瞬間、異変が起きた。空が突然、不気味な音とともに閉じたような感覚に襲われたのだ。まるで天が裂け、別の次元へと引きずり込まれるような錯覚だった。既にこの時点で、状況の意味がまったく理解できなかった。このバグった世界では、時間や空間の法則すらも歪んでいるのだろうか。私は混乱しながらも、前に進むしかなかった。この異常な現象は、単なるゲームの不具合なのか、それとも何か大きな力が働いているのか、答えを求めて歩みを進めた。
記憶の奥底から、私はある重要な事実を思い出した。レーベの村の近く、鬱蒼とした潅木の茂みに隠された洞窟だ。その洞窟は、かつてアリアハンの城へと続く秘密の通路だった。私はその記憶を頼りに、藪をかき分け、薄暗い洞窟の入り口を見つけた。洞窟の中は、湿った空気と苔の匂いが漂い、どこか不気味な静けさに満ちていた。だが、私は恐れることなく進んだ。この洞窟こそ、私をアリアハンへと導く鍵だと信じていたからだ。足元の岩がゴロゴロと音を立て、松明の明かりが壁に揺れる中、私は希望と不安の入り混じった気持ちで歩を進めた。
ついに、私はアリアハンの城に足を踏み入れることができた！城の門をくぐった瞬間、かつての栄光と威厳が蘇るかと思った。しかし、目の前に広がる光景は、私の期待を裏切るものだった。
城の中は、どこか異様な空気に包まれていた。衛兵たちの目は虚ろで、まるで魂が抜けたかのように無表情だった。私は急いで王の間に駆け込み、ゾーマ討伐の偉業を報告しようとした。だが、王の姿を見た瞬間、背筋に冷たいものが走った。王の見た目が、どこかおかしいのだ！「にゃーん」と、まるで猫のような声が玉座から響いた。何！？この異様な雰囲気は何だ？王の顔は、まるで別世界の存在のような不気味な微笑みを浮かべていた。この瞬間、私は確信した。この王は、私が知るアリアハンの王ではない。
王の正体は、驚くべきことにモンスターだった！一瞬、サマンオサのボストロールかと思ったが、よく見るとそれはベビーサタンだったのだ！小さな体に不釣り合いな邪悪なオーラを放つベビーサタンが、堂々と玉座に座っている。この光景は、信じがたいほど滑稽でありながら、どこか恐ろしかった。アリアハンの城が、こんな存在に支配されているとは！城内の者たちは、この異常事態にまるで気づいていない様子だった。大臣たちは淡々と書類を整理し、衛兵たちは無言で立ち尽くす。まるでベビーサタンが王であることが、当然のことであるかのように振る舞っていた。彼らは、何か禁断の秘密を聞いてしまったのだろうか？それとも、このバグった世界では、こんな異常が日常と化しているのだろうか。私の頭は混乱でいっぱいだった。
アリアハンの異変に耐えきれず、私は城を後にし、ダーマ神殿へと向かうことにした。ダーマ神殿は、勇者たちが新たな職業を選び、力を得る神聖な場所だ。そこならば、何か答えが見つかるかもしれないと期待していた。だが、神殿に足を踏み入れた瞬間、その希望は無残にも打ち砕かれた。神聖なダーマもまた、アリアハンと同じく存在しなかったのだ。神殿の荘厳な柱は、どこか歪んだ影を落とし、まっさらな更地は不気味な気配が漂っていた。この神殿もまた、バグの魔手に落ちていたのだ。
さらに驚くべきことに、美しいイシスの女王もまた、モンスターに成り代わっていた！その正体もまた、ベビーサタンだったのだ。優雅なドレスをまとい、女王の気品を装っていたが、その笑顔の裏に潜む邪悪な輝きは隠しようがなかった。この事態に、私は言葉を失った。イシスの女王といえば、砂漠の国を治める高貴な存在だ。その彼女が、こんな小さな悪魔に成り代わっているなんて！私の心は、怒りと悲しみで揺れ動いた。このバグった世界は、どこまで私の知るドラゴンクエストを冒涜するのか。
さらなる異変が私を待っていた。ピラミッドの人食い箱とされるモンスターは、ただの無害な宝箱に成り代わり、毒沼は足を踏み入れてもダメージを与えない。まるでこの世界の危険が、すべて無力化されているかのようだった。ある意味、これは平和な世界なのかもしれない。だが、この偽りの平穏は、私の冒険者としての魂を苛立たせた。敵がいない世界で、勇者とは何をすればいいのか？私は自問自答しながら、立ち尽くしていた。この異常な状況は、私に新たな試練を突きつけているのだろうか。
予想通り、ゾーマを倒したことで、銀の竪琴の力も無効化されていた。この竪琴は、モンスターを呼び寄せる不思議なアイテムだが、今やその音色はただの旋律に過ぎない。私は自問した。「私は、どこかで間違った選択をしたのだろうか？」このバグった世界は、私の勝利が引き起こした結果なのか、それとも別の力が働いているのか。答えを求めて、私はピラミッドへと向かった。そこには、宝箱を守るミイラ男が現れるはずだ。私はその戦いに期待を寄せ、剣を握りしめた。そして、確かにミイラ男は現れた！その瞬間、久しぶりに冒険の鼓動を感じた。
しかし、戦いの結末は予想外だった。勇者は死んでしまったのだ！ミイラ男の呪いの力に抗えず、私は倒れ、意識を失った。この時、私は思った。ベビーサタンとの戦いでも、死は免れないかもしれないと。なんともみっともない結末だ！私はラダトームの教会で目を覚ました。そこでは、ゾーマ討伐の祝賀式典が盛大に執り行われていた。だが、その華やかな祭りの真っ只中、私は死から蘇ったばかりの勇者だった。群衆の歓声の中、私は自分の存在意義を問い直していた。このバグった世界での私の冒険は、まだ終わらない。
