「学校制度の適応と成人後(主に労働の中心)社会への適応が、場合によっては、逆の関係を持つことがないのか?」という議論がある。
この議論は、ウェブ上の個人サイトなどでもよく見られることだが、ここの読者のみんなには、このような疑問を感じている方や、また、「どうしてそんな否定的な相関関係が出る?」とお考えの方は多いと思う。
これらの疑問は、通常において、一度学校制度に順応し、いわゆる「いい子」だった人々から、「どうして自分は大人になった後、社会にこうも適応がないか」という感覚の逆に現れるものだ。
「なぜ学生時代に誠実な自分が会社と社会に馴染めないの?」「なぜ学校にそのように反抗していた奴らが、会社と社会に慣れているの?」という話です。
この質問への仮説に私は知っているいくつかの本からの引用と解説を書きたいと思う。
『ハマータウンの野郎ども』(ポール・ウィリス著、ちくま学芸文庫、1977年)という本がある。
この本は、イギリス王国の代表的な工業都市であるハマータウンの中学校(11歳から16歳まで)で、「敗者」で学校に反抗的な生徒の生活やものの考え方を、様々なの学生の会見を通じて明らかにした本だ。
この本は、二種類の対照的な学生のタイプが出る。
一つは、「thelads(野郎ども)」、もう一つは、「ear-holls(耳穴っ子)」と呼ばれる学生だ。
この本の主眼が置かれているところのtheladsは、アンチ学校的である(その多くは、高校卒業後の就職)男子学生たちの自称代名詞だ。
日本で言うなら「不良」「ヤンキー」というものに該当する学生だ。
一方、ear-hollsというのは、学校と教師に対して従順な学生だ。
先生や親の言葉を「聞いて」耳で収容した他人の表現に従う彼らをtheladsはからかってこう呼んでいる。
「ハマータウンの野郎ども」の原題は「LEARNINGTOLABOUR」だ。
この成句は、「勉強から労働に」とも翻訳することができる。「仕事を学ぶ」を意味するダブルミーニングだ。
日本語訳のサブタイトル「学校への反抗労働への順」というものが端的に示しているが、この本は、まさに、「なぜ学校制度の適応と、成人後(主に労働を中心とする)社会への適応が、どのような場合には、逆の関係を持つのか?」というテーマを扱っているのだ。
更に、その質問への答えは、次のように明らかにに記述されている。
労働者階級のアンチ学校である子供が、特定の工場労働引い追い込まれ、そこに定着するようになるためには、もう一つ、少し屈折した要因が介在する。
これは、新たに雇用者と監督者となる者との関係付けに参加している。
野郎どもが学校で身につけてきた文化は経営者にもそれなりの目算があるのだ。
すなわち、少年たちが学校制度の背面から育てた<奴らと私たち」という対立的な考えの方は、逆に見れば、権威?服従の関係そのものは受け入れることを前提となっている。
<俺たち>がある一方、<奴ら>がある関係の枠組み自体は許容されているのである。
この関係が不便であればこそ、そこを何とか楽しい楽しいものにして、隙あらば乗じようとするのに、一方、男の子の文化は、権力が位階秩序の上方に偏在することをとにかく受け入れ、その妥協の方向に行く。
反抗が優れた文化的なレベルに根を下ろすその時、権力関係自体に挑戦する政治的級の野心は消滅してしまうのである。
<奴らと私たち」という哲学は、一方、非常に身近な興味と人間臭い物事や仲間関係の重要な意味を拾って固めるが、一方、その物事を深層によって制限している実際の権力関係に介入することは後回しである。
最低でも後側の局面は、はっきり意識化されていないのである。
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